ニチイ

研究2 ニチイケアセンター府中南町における中間層スタッフの教育システムの構築研究

発表者
草場 英朗

ニチイケアセンター府中南町(介護付有料老人ホーム)

研究にいたる背景

平成27年度、ニチイケアセンター府中南町では3名の新人職員を中途採用し、中間層職員がOJT指導を行っていた。中間層職員からのOJTは指導方法が統一されておらず、新人職員の育成・指導にも格差が出ていた。 また、他の拠点では、事業所の中心となっていくべき中間層職員が介護福祉士の資格取得後、ステップアップのために転職してしまう等の現状があった。

このような中間層職員の課題は、中間層職員に対する指導・教育が十分でなかったこと、中間層職員が介護職員としてひとくくりになっていて、位置づけが明確でなく、やりがいや施設での将来的な展望が描けていないことが原因と考えた。

そこで、中間層職員の教育に着目し、NC府中南町における教育システムの構築研究に取り組むこととした。

研究目的

教育システムの構築を行うことで、中間層職員の意識が向上し、実際に新人職員の指導等に取り組むことで中間層職員の育成が図られる。

また、相乗的に新人職員の育成が達成される教育システムとして、安全管理委員会の機能強化や、中間層職員の教育システムの構築により人材育成による効果としてサービスの質の向上や人材定着が期待できる。

研究方法

仮説

  • 中間層職員を他の介護職員と区分けし、新人職員を指導する立場であることをしっかりと指導・教育したうえで、実際に中間層職員が新人職員の指導を行っていくことで、中間層職員自身の意識が向上し、中間層職員の育成が図られるのではないか。
  • (1)の中間層職員よりOJT指導を受ける新人職員も相乗的に育成されるのではないか。

研究方法(教育システムの構築方法)

  • 研究手法:介入研究
  • 研究対象者:中間層職員8名
  • 中間層職員とは、3年以上の介護業務経験があり、常勤および非常勤で170時間前後の勤務時間を有する者のうち、新人職員のOJT担当者として適当と認められる者を指す

教育システムの構築

1. 安全管理委員会の機能強化

  • 新人職員それぞれの課題を抽出し、期限を決めた目標の設定
  • 施設長や介護主任等がOJT担当者である中間層職員へ新人指導が適切に行えているか把握し、適宜指導を実施。

2. 中間層職員を区分けし、指導・教育する

  • 中間層職員の位置づけを明確化するために研修を実施

3. 中間層職員による新人職員へのOJT指導

  • 新人職員の課題の抽出をおこない、安全管理委員会で目標の設定を行いました
  • 円滑にOJT指導できるよう、シフト調整を実施

評価方法

構築したシステムが有効であったかについては、中間層職員の意識調査と、新人職員の介護技術チェックの2面から評価を行う。

  • 中間層職員の意識調査:
    研究前・研究後のチェックシートの実施(「業務を適切に遂行する力」「人とチームの能力・活力を上げる力」および「新人職員のOJT指導について」)
  • 新人職員の介護技術チェック:
    介護主任よる評価を実施(研究前・研究後の移動、清潔、排泄、食事、その他の5項目について)
  • その他(付加的):
    関係者へのアンケート・インタビューの実施(関係者:お客様やご家族、協力医療機関の主治医や看護師、訪問リハビリ等、関係機関の専門職)

研究結果

1. 中間層職員の意識について、【業務を適切に遂行する力】【人とチームの能力・活力をあげる力】双方とも、研究を通して向上した。新人職員に対するOJT指導にあたって、新人育成の目的を理解し、自分の役割を理解しながら新人職員個別の指導を拠点内で統一して行えるようになった。

2. 1の結果、新人職員の介護技術チェックについては、特に業務において「絶えず指導や援助が必要」な状態から、全員がほとんどの項目において部分的な指導や援助を必要とせず、自立してできるようになり、統一した介護が提供できるようになった。

このように、中間層職員の意識調査と新人職員の介護技術チェックから、中間層職員の育成に着目した教育システムの構築が有効であった。また、教育システム構築の効果として、お客様やご家族、関係機関からもサービスの質が向上している等の評価が得られた。

考察

中間層職員について、【業務を適切に遂行する力】に加えて、「役割理解と自己啓発」「チームで働く力」「日常的に新人職員を指導する力」等の【人とチームの能力・活力を上げる力】が中間層職員の役割であることを意識し、実際にその役割を担っていくことで中間層職員は育成され、ステップアップできると考える。

人材の定着率向上については、今回は評価に至らないため、今後の課題として検証していく必要がある。

結論

教育システムの構築にあたって、中間層職員の育成に着目し、安全管理委員会等を活用しながら、中間層職員に教育・指導を行うことで、中間層職員自身が役割を意識するようになった。

中間層職員の意識が向上し、新人育成の役割を担っていくことで中間層職員の育成が図られ、ひいては新人職員の育成につながった。 さらに、研究の効果として、施設全体のサービスの質の向上がみられた。

人材の定着については、今後時間をかけて検証していく必要があるが、今回NC府中南町で取り組んだ教育システムは、他拠点でも活かせると考える。

参考・引用文献

介護労働安定センター『介護事業所における中間管理者層のキャリア形成に関する研究会最終報告』 新規ウィンドウで開く

  • 介護労働安定センター『介護技術チェックシート~基本動作について確認から習得まで~』
  • 兵庫県社会福祉協議会 社会福祉研究所 平成24年3月 『OJT担当者のための新任職員育成ハンドブック~新任職員も中堅職員も育つOJT実践へ~』