ニチイ

研究5 地域における訪問看護の役割を明確にし、日々の業務の中で実践する手法を構築

発表者
前原 裕子

ニチイケアセンター南浜松(訪問看護)

研究にいたる背景

日々、訪問看護サービスを提供する中で、介護支援専門員から、「医療的な知識がないので、訪問看護サービスの利用方法が分からない」と、耳にしたり、初めて訪問看護のサービスに入ったお客様やご家族から「自宅に看護師さんが来てくれるなんて知らなかった」という話を聞いたことがあり、地域の中で訪問看護サービスが知られていない現状や、本来訪問看護サービスが必要な高齢者にサービスの提供ができていない現状があるのでは、と懸念される。

また、高齢者が住み慣れた地域で継続して暮らすためには、介護と医療の連携が重要であると大きく謳われている。訪問看護事業所が理解されることはもちろん、地域の中で求められる訪問看護の役割は何か、地域の中で果たすべき訪問看護の役割は何か考え、地域における訪問看護の役割を明確にし、日々の業務の中で実践する手法を構築する研究を行いたいと考えた。

研究目的

  • 訪問看護の役割を明確にし、日々の業務の中で実践する手法を構築する。
  • 研究で明らかになった手法を業務の中で実践につなげ、訪問看護サービスを有効に利用してもらうことで、高齢者が住み慣れた地域で継続して生活できるように支援する。

研究方法

研究の流れ

Ⅰ.質的研究

インタビュー結果から以下の課題や要望を導くことができた

課題
  • お客様の在宅生活を支える上で、お客様の医療情報が得られていない
  • 多職種との連携において、医療情報が不足していることや自宅での生活状況が知りたい
訪問看護事業所に対する要望
  • 医療に関する情報提供や相談にのってほしい
  • 勉強会の実施
  • インタビューから得られた課題や要望などを踏まえて、アンケート調査票(後述の「Ⅱ.量的研究))を作成

Ⅱ.量的研究

訪問看護の役割を明確にするために、お客様・ご家族、地域の医療機関やサービス事業所にアンケートを実施し、アンケート結果を分析し訪問看護の役割を導いた。

アンケート結果

1. お客様・ご家族に対してのアンケート

アンケート項目:
訪問看護事業所に対する意識、訪問看護サービスを利用してよかったと思うことはあるか
結果:
  • 医療依存度の高低に関らず、訪問看護サービスを利用することで、在宅生活を継続するための安心感を得ている。
  • 訪問看護を利用することで、お客様もご家族も自宅での生活が安心できている。
  • 高齢者が医療的なケアが必要になっても在宅で生活するために、訪問看護は様々な面から支援していく必要がある。
  • お客様は世帯構成に関係なく、訪問看護師が相談相手になってくれることで、自宅で安心して暮らせていると感じている。

2. 居宅介護支援事業所・各サービス事業所に対してのアンケート

アンケート項目:
多職種間の連携状況
結果:
利用者の在宅生活を支えていく上で、過半数以上が多職種間において十分に連携できていないと回答

3.居宅介護支援事業所・各サービス事業所・診療所・調剤薬局に対してのアンケート

アンケート項目:
お客様(患者)を支えるために、業務を行う上で重要だが不足していると思う情報は?
結果:
居宅介護支援事業所・各サービス事業所は、本人に関わる医療情報・住環境・家族関係が、重要だが 不足している、診療所・調剤薬局は、在宅生活状況の情報を求めているという回答。

Ⅲ.アンケート結果からみた訪問看護の役割

介護と医療をつなげる役割

日常的な関りの中で医療的な情報と生活面両方の情報を持つ訪問看護事業所が、関係機関の必要なニーズを捉え、介護と医療が相互理解に繋がるような架け橋となることが必要。

お客様・ご家族の支援

お客様の医療的ケア、相談、緊急時の連絡等、医療情報を説明することで、お客様やご家族の安心感に繋がる。

地域での啓蒙活動

訪問看護の役割を理解できるような取り組み、訪問看護の利用のメリット、介護と医療の連携等について、広く啓発していく。

考察

インタビューやアンケートの結果を分析した結果、高齢者が住み慣れた地域で継続して生活できるように支援するためには、訪問看護事業所として、お客様・ご家族・関係機関に対し大きく3つの役割が担うことが必要と考える。また、地域包括ケアシステムにおける、介護と医療の連携において、訪問看護が「要」として担う役割が今回の研究を通し明らかになってきた。

結論

訪問看護の求められる役割は以下の3点である

  • 介護と医療をつなげる役割
  • お客様とご家族の支援
  • 地域での啓蒙活動

医療ニーズのあるお客様が住み慣れた地域で在宅生活を継続してく上で、お客様やご家族にとって訪問看護は、医療情報を正しく伝え、相談ができ、生活の安心に繋がることが確認できた。また、多職種連携における各関係機関の現在のニーズを捉え、訪問看護の役割が明確になったことで、より介護と医療が連携した質の高いチームケアにつなげることができると考える。

また、医療ニーズの高い高齢者が増えることが想定される中、地域の訪問看護のネットワーク(訪問看護ステーション協議会)等を活用し、共に地域で訪問看護の役割を果たしていくことが、医療サービスの有効な活用につながり、地域高齢者のQOLの向上に繋がると考える。