
- 発表者
- 白井 智重子(介護職員)
- 坂上 知恵子(介護職員)
ニチイケアセンター網走(グループホーム)
お客様プロフィール
K様 / 80代 / 男性 | |
---|---|
要介護度 | 要介護3 |
課題 |
|
取り組み
仮説
- 「体重の減少」に対し、好きな食品を提供することで「食べる楽しみ」を感じて頂き、栄養補給につなげ、体力増進、体重増加を図れば、明るく元気な生活を取り戻せるのではないかと考えました。
- 「生活全般における意欲低下」に対し、生活リズムを作って離床時間を増やし、他者との交流を深めることで歌と話が好きで社交的なK様らしさを取り戻せるのではないかと考えました。
取り組み内容
- 主食の粥に好きな卵や野菜を入れる、高栄養のゼリーを1日1個提供、身体機能を考慮し、ストローと軽い素材のカップを使用するなど、食事面で工夫をしました。
- 薬を錠剤から粉薬へ変更し、少量の水に溶かして服薬介助を行いました。
- 医師と相談したうえで、睡眠薬を1錠減らし、様子を観察しました。
- 居室からリビングに移動し、クッション等で座位保持を図りながら、座位姿勢の観察を行いました。また、立ち上がり時の臀部引き上げ介助を実践しました。
- 昼寝は1時間程度とし、K様への声掛けや返答を職員間で統一しました。K様に職員の名前を覚えて頂けるよう、あえて職員を愛称で呼び合うようにしました。
結果
- 体重が増加傾向に転じ、入居当初より、7キロあまり増加し、BMI値15.7「痩せ型体型」からBMI18.7「標準型体型」に変化しました。食べる意欲も見られ、歯の治療をきっかけに好物の「かりんとうを自分の歯で食べられるようになりました。
- 睡眠薬を減らす事により、離床時間が増加しました。
- ボール運動、カルタ取に積極的に参加し、他のお客様とも言葉のキャッチボールが可能になりました。また、塗り絵を楽しみ、元の几帳面な性格が現れるようになりました。
- 生活リズムが改善し、コミュニケーション・意思表示・歌を歌うなど表情が豊かになり、明るく社交的なK様らしさが取り戻されました。
考察
今回の事例を通して「ADL」や「QOL」を向上する為の基本は「栄養改善」と「生活リズムの改善」、「医療との連携」にあることを再認識しました。自分で食べ、自分の歯で咀嚼して嚥下することで脳が活性化され、また規則正しい生活を送ることが、体力・筋力の増進に繋がると考えます。こうして、K様の意欲の向上に繋がり、K様の本来の姿である「歌と話が好きで社交的な性格」の現れや、自己決定、意欲向上などの意思表示もはっきりされ、「死にたい、死にたい」等の消極的な言葉もなくなりました。
結論
今回のK様に対する取り組みを通じて、私たちは認知症介護において、アセスメントを通じて「その人らしさ」とは何かを検討すること、こころと身体の両面からアプローチし、「栄養改善」「生活リズムの改善」「医療との連携」などを包括的に取り組むこと、職員間で介助方法を統一し、チームケアに取り組むこと等を総合的に行うことで、認知症高齢者の「その人らしさ」が取り戻されるのだと感じました。